プロ野球はキャンプも終盤にさしかかっているが、
三連覇を目指す福岡のホークスは、キャンプ序盤から、
工藤監督が、六人のレギュラー確定選手を発表していた。
キャンプ序盤にレギュラーを公言するのはめずらしいが、
レギュラー組は万全の準備を、
レギュラー組以外は、空いている席を全力で狙いに行けというメッセージだろう。
工藤監督は、西部で黄金時代を築いた後、
当時、万年Bクラスだったホークスにやってきた。
そこで、若手キャッチャーの城島を徹底的に鍛えて、
今度はホークスの黄金時代を築いた。
当時、打力には定評のあった城島だけど、
キャッチャーとして、リード面ではまだ難があり、
工藤は時に城島の出すサインが間違いと知りつつ、
城島が出したサインに頷いて、しっかりと打たれていた。
打たれることで、城島に学ばせ、育てていた。
城島は、自分の成績が悪くなることを覚悟でサインに頷いている工藤の愛情(教育)を
ひしひしと感じていたはずだ。
(だからこそ、工藤が監督になる時に、ホークスに戻ってくると思ったんだけどな!
釣りやってる城島もいいけど、一回くらい戻ってきてほしいな!)
だが、当時城島を育てていたのは工藤だけでなく、
武田も、吉田も、監督の王さんも、
なんとか城島を一流の選手にしようとしていた。
「打つ方は放っておいたってできるんだから」
王さんはいつもそういう言い方で、
城島のキャッチャーとしての能力を伸ばそうとしていた。
野球選手は、打って、守る。
ピッチャーは投げるだけで仕事が終わるが、
それ以外の選手は、守ることと打つこと、
両方できなければ一人前とはみなされない。
それはポジションの中で、一番負荷のかかるキャッチャーも同じこと。
「城島は放っておいても打つ方は、勝手にうまくなるんだから、
今やるべきは守備なんだ」という発想は、
野球選手は、「一芸に長けていても一流になれないこと」を示している。
一流の野球選手は、少なくとも「二芸」に長けていなくてはならない。
打つ方と守る方。
一芸に長けていても、
代打の神様や走塁や守備のスペシャリストにはなれても、
一流の野球選手にはなれない。
そのことは、ビジネス誌などで、
「人は強みによって人の役に立つ」という言い方を耳にするたびに思いだす。
人が、その人の弱みではなく強みによって、
誰かに必要とされ、社会の役に立てることは間違いないけれど、
その強み一つで事足りるかどうかは、その業界による。
打撃力だけ磨けば生きていける業界もあるだろうし、
打撃力一本では一人前として認められらない業界もあるだろう。
強みを伸ばすか。
弱みを克服するか。
それは生きている世界によって変わる。
はて、
では、生きる世界がまだ決まっていない子どもは、
どちらをどうするべきなのだろうか。
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