子どもの頃、ドラゴンボールの1巻から30巻くらいを一気に大人買いしている人を見た。
1巻1巻を、手元の小銭とにらめっこしながら、
買おうか買うまいか悩んでいた小学生からすると、
大人の財力が羨ましかった。
夏の暑い日に、一日中遊び回った夕方、
駄菓子屋でアイスかジュースかどっちを買おうか迷うことがよくあった。
散々迷ったあげく選んだ選択は、どちらにしても、毎回間違っていて、
アイスを買っても、ジュースが飲みたかったなと思っちゃうし、
ジュースを選んでも、やっぱりアイスだったなと後悔した。
その場合の本当の正解が「両方とも買ってしまう」ということに気付いたのは、
大学を卒業してからだったが、
それは財力の問題というより、
どちらか一方しか買っちゃいけないという
自分の貧乏性に気付けていなかったということの方が大きかった。
大人になると、服や靴を買いに出るのもおっくうになって、
しぜんと、ネットショップで買うことが多くなってきた。
先日も、スニーカーを買おうと思い、ネットで物色していたら、
いくつかよさそうなものを見つけることができた。
ただ、靴は履いてみないとわからないところがあるので、
注文には、慎重になる。
いいと思って買っても、届いたものが気にいらないと、
また注文を繰り返すことにになるので、
どちらにしようか迷った時は、二つ、頼むことにしている。
第一候補と第二候補。
靴も服も、メーカーによってサイズにばらつきがあるので、
それぞれ違うサイズのものを注文すれば、サイズが合わないこともないし、
直に見たときのデザインも、どっちかは、気に入る。
気に入らなかった方は、数日中に送り返すので、無駄な送料がかかるが、
届いた靴が気に入らなくて、時間が無駄にかかるよりはましだと考えている。
大人は、時間を金で買うのだ。
ピンポーン。
家のチャイムが鳴り、部屋に靴が二足届く。
さっそく届いたデザインとサイズ違いのスニーカーをそれぞれ履いてみると、
最初に履いたスニーカーは、ちょっと大きい気もするが、デザインがいい。
ウェブで見た時よりも良く見える。
二足目に履いたスニーカーは、なんだか、デザインがしっくりこない。
ただ、サイズがぴったりで、履き心地も軽いので、
遠くにでかける時は、こっちの方がよさそうだ。
両方とも、それぞれにいい。
んー、どっちにしよう。
迷うなあ。
そうこう悩んでいるうちに数日が経ってしまい、
返品作業をするのもおっくうになってきたので、
結局、両方手元に置いておくことにした。
こういうのは、”アイスとジュース理論”みたいなもので、
どっちを返しても、結局、後悔するのだ。
大人なら、両方買うに限る。
「お金で時間を買った」上に、好きな一足でなく、二足とも買ってしまうなんて、
自分でも大人だなあと思う。
こんなこと、子どもには、真似できまい。
金と考え方の幅が広ければこそだ。
そのことを、同僚の女性に、”大人の話”として話すと、
子育て中の彼女はあきれたように、言った。
「なにそれ!店に行って買えば一足で済むものを、
要りもしないのに二足分の金を払うなんて、”子ども”!
無駄!ほんと、それ、子ども!無駄!・・・無駄!」
そう、一蹴されてしまった。
まぁ、確かに、そう言われれば、そうかもしれないな。
こういうのは、大人にしかできないかもしれないけど、
こういうのは、あれだな・・・、”子ども買い”なのかもしれないな。
コメント