富士山は日本一の山だ。
文句ない。誰がどう見ても日本一。
もし高さで富士山に勝つ山が今後(今後?)出てきたとしても、
富士山の日本一は変わらないだろう。
それは、記憶の中での富士山イズナンバーワンが不変だから。
たとえ、記録でいつの日か負けたとしても(いつの日か?)、
記憶的に富士の勝ち。
勝負で負けても相撲で勝つ。
歴代最多勝利数が白鵬でも、最高の横綱が千代の富士であるように。
あまりにも富士山のナンバーワン感が当たり前だったから、
高校生の時、ある外国人に、
富士山が一番なのは、一年間に登る登山者数が世界一だからなのよと言われて、
愕然とした。
世界に冠たる、かどうか知らなかったが、
世界の人が「マウント・フジ」と話題にする富士山が
世界でも有名なのは、世界で一番登られている山だからだったなんて、
そんなのあるかよって思った。
霊峰・富士は、登山者とか標高とか、日本とか世界とか、そんなの関係なく、
唯一無二のナンバーワンだと思っていたから、
数字で評価されたことに愕然としたが、
そのアメリカ人が「登山者数」という評価軸を持ち出したのは、
その人の地元の山が世界で2位の登山者数だったから
ということは後で知ることになった。
自分とこの自慢のために、富士山を「記録」に押し込めるなんて、
山愛好家の風上にも置けないなと言いたかった。
富士山を記録ではかるなんて、長嶋茂雄を生涯打率ではかるようなもの。
長嶋は、生涯打率歴代12位だからすごいって言うようなもので、
それは、もう貶めだよね。
そう言ってやりたかったが、
アメリカ人に長嶋茂雄のすごさを説明できるだけの英語力は
僕にはなかった。
今月4日から、パスポートの査証欄のデザインが、
葛飾北斎の「富嶽三十六景」になると聞いた。
富士山の素晴らしさの一つである、
誰もが絵に描きたくなるという美点が海外の人にも伝わりそうでなによりだ。
ただ、査証欄ってのは、出入国のスタンプ押す欄のことで、
最近、自動入国で、スタンプ自体押すことがなくなったけど、
それもこれも、富士山は汚さないようにしようっていう、
日本人の無意識の富士賛美が影響しているのかもね。