脳科学者の茂木さんが日本のお笑いに対して、
「国際水準のコメディアンとはかけ離れているし、
本当に『終わっている』」
「権力者に批評の目を向けた笑いは皆無」
とツイッターに投稿したことに、
日本のお笑い芸人が反論しているらしい。
アメリカやイギリスに比べて、日本の笑いは、政治を扱わない。
世相を皮肉ったり、オバマ大統領のモノマネをしたとしても、
政治家を痛烈に批判するネタをテレビでやることは、まずない。
アメリカとイギリスのコメディアン事情はよく知らないが、
アメリカとイギリスが二大政党制だということは、僕でも知っている。
二大政党制の国では、
例えコメディアンであっても、
自分の政治的立場を明確にすることに違和感がない。
特にアメリカは、テレビ局に明確な色がついているので、
保守系のテレビ局では、オバマのリベラルぶりを皮肉り、
リベラル系のテレビ局では、トランプの保守ぶりを皮肉っている。
(トランプ大統領が「保守」かどうかは置いといて)
だから、コメディアンは自分の笑いが伝わりやすいメディアに出るし、
視聴者も、自分の政治的信条に合うチャンネルを見て、
気楽に権力者を笑っている。
アメリカであれイギリスであれ日本であれ、
権力者を笑いものにする「道化師」はずっと、
地位の低い人が引き受けてきた。
地位の低い人が王様を笑うからこそ面白いのであって、
地位の高い人に、その役回りは務まらなかった。
だから、ずっと、政治の笑いは「上・下」しかなかった。
それを今、「右・左」で笑わせている英米は、
やっぱり、もしかしたら日本よりも進んでいるのかもしれないし、
平等な「市民社会」が確立されているといえるのかもしれない。
日本では、芸人であれミュージシャンであれ、芸能人は、
一言、二言の政治的な発言すらタブー視されている。
日本の笑いには、未だに「上・下」しかなく、
政治的に平等な立場での「右・左」は許されていないのだろう。
多分、日本のお笑いは、茂木さんの言うとおり、
「世界水準」からは大きく離されているのだと思う。
世界からはずれて、日本人だけしか笑えない笑いを追求した結果、
極端にガラパゴス化しているのだろうと思う。
ただ、お笑いに「世界水準」なんてものは、正直、なくてよい。
笑いを測る水準は、世界に数え切れないほどあるし、あるべきだと思う。
日本国内だけ見ても、笑いの基準はいくつもあるし、
いくつもあるからこそ、笑いの賞レースはいつも紛糾する。
世界にはそれよりもっともっと多くの、
その文化、その言語でしか理解できない笑いの形があるだろう。
チャップリンは生前、コメディを武器にヒトラーと対決したけれど、
政治的「独裁者」に対抗する笑いの手段が、
英米の水準に適うものだけになってしまったら、
世界に一つの笑いしかなくなってしまう。
そんな世界、まったくもって笑えない。
笑いは、怒りや泣きよりも、個人差がある。
「ガッテン」の志の輔さんも、そう言っていた。
笑いほど、世界の多様性を確保しておきたい分野もない。
でも、茂木さんは「問題提起者」だから、
これはこれで、すごくいい「議題」だと思います。
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