超人

「超人」という概念がある。
英語でいうと「スーパーマン」である。
人間でありつつも、人間を超えた存在。
これは哲学者のニーチェが提唱した概念だが、今の世において、最も「スーパーマン」に近いのは誰かと考えた時、それは、メジャーリーガーの大谷翔平で間違いないだろうと思う。
大谷翔平こそ「超人」である。

ニーチェは、「超人」を定義づけたり、具体的な歴史上の人物を例に出すようなことはしなかったが、「超人」概念を発表する前、後の「超人」につながるような、高い精神を持つ者の例として、フランスの支配者・ナポレオンやドイツの文豪・ゲーテ、ローマの将軍・カエサルを挙げた。
つまり、「超人」とは、そういった歴史的な系譜に連なる、人間とは思えない能力を持った人々のことである。

ニーチェは、「超人」について、単なる「英雄」や「聖人」や「天才」のことではないと言ったが、同時に「超人」は「幼児」のようであり、「創造する者」であり、「力への意志を持つ者」であり、「すべてに耐える精神力(バタイユ)」を要求される者であると語った。
それらはすべて大谷翔平に当てはまる説明である。
大谷翔平は、「幼児」のように純粋に野球を愛し、未踏の道を「創造する者」であり、どんなプレッシャーにも「耐えうる精神力」を有する者である。

この3月の、文句のつけようのないWBCでの活躍後、アメリカ人インタビュアーが大谷翔平への質問で、「君はどの惑星から来たの?」と聞いていたが、大谷翔平が人間を超えた存在であることに、誰もが気づきつつある。
大谷翔平は、人間というより、「地球生まれのサイヤ人」または「悪魔の実を食べた人間」に近い存在であるのだ。

人間を超えた存在である大谷翔平をなんと呼ぶのが最もふさわしいか考えていると、プエルトリコ代表のメジャーリーガーが、大谷翔平のことを、「メジャーリーガーに化けた神話的な存在」とツイートしていた。
確かに、人間でありながら人間を超えた大谷翔平は、「神話の中の神」といって差し支えない。
大谷翔平は、ゼウス、アポロン、アフロディーテ、プロイセンに連なるような神話的な存在である。

だが、もしそうであれば、神話の神には、贈与と強奪、破壊と再生のような二律背反的な側面があることを忘れてはならない。
大谷翔平は、ストイックで、やさしく、おちゃめで誰からも愛される性質があるが、神話的存在なのだから、それとは真逆の、強奪的で破壊的で、反道徳的な性質も併せもっているはずである。
その真実を人々が知った時、皆は手のひらを返したように大谷翔平をバッシングするかもしれないが、神話的神とは、人間の倫理に従って生きる存在ではない。
我々のものさしを当てる対象ではないのだ。
もし、今後、大谷翔平に大スキャンダルになった時こそ、プエルトリコ・メジャーリーガーのツイートを思い出して、大谷翔平が「神話に生きている存在」として、すべてを許してほしい。

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