ズルい大人

 

中山間地の小学校の子どもたちが、階段に座って遊んでいる。
その子らの隣に腰掛けて、何をしてるのかと覗いて見ると、
近くの野っ原から取ってきた花の花びらを1枚ずつ、ちぎっている。
「好き。嫌い。好き。嫌い・・・」
こういう遊びは、子どもの世界に、まだまだ残っているんだなと感心するが、
こういう遊びは、誰に教わるんだろうか。

花びらの数が「奇数」だったので、 無事、「好き」でちぎり終わったその子は、
もぎ取った花を一本、僕にくれた。
「やっていいよ」
そう言われても、大して占いたいこともないのだけど、
見られているので、しょうがなく、1枚ずつ、花びらをちぎる。
「好き。
 嫌い。
 好き。 だけど好きって言えない。
 嫌い。になりたいけど、嫌いになれない。
 好き。になっちゃいけないってわかってるけど、どうしようもない。
 嫌い。って言ってくれたらどれだけ楽かって、毎晩寝る前に、 」
「それ、ダメ!」
花びらを全部ちぎる前に、手を止められる。
子どもの世界に、割り切れない感情は持ち込んじゃいけないらしい。

花占いは切り上げられ、縄跳びをすることになった。
「私、二重跳び、できる」と言うので、勝負することになり、
「いっせーの、せっ」で二重跳び競争が始まる。
全力で二重跳びをする子どもの斜め後ろで僕は、
二重跳びに入る前の縄に、すでに引っかかっていた。
ただ、相手が、僕のミスに気づいていなかったので、
飛んでいるフリをして、相手が引っかかったところで、
一回だけ二重跳びをして、勝ったふりをした。
「勝った」
相手は、一瞬、僕の誇った顔を信じて残念な顔をしていたが、
周りで見ていた子に「大人のズル」を教えられて、憤慨していた。
ギャラリーがいなければ、騙し通せた。

階段に戻って、「じゃんけんグリコ」をする。
じゃんけんをして、勝った決まり手の数だけ階段を駆け上がる。
「じゃんけん、ぽん!
  チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」
子どもが階段を上に、登っていく。
なぜかじゃんけんに全然勝てなくて、だいぶ差がついてしまい、
大きな声を出さないと、相手の声が聞こえないくらい離れてしまった。
こっちはまだ「グリコ」で二回勝って六段登っただけなのに、
相手は、はるか遠く上にいる。
一気に距離を縮めたい。
「じゃんけん、ぽん!」
ようやくグー以外で勝つ。
「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト・デ・ィ・ス・コ」
三段飛ばしで、階段を駆け上がる。
「あ、また、ズルしてる」
「知らない?Perfumeの歌。チョコレート・ディスコって歌」
「ずるばっかぁ〜」
そう言えば今日は、ずるばっかしているような気がする。
ルールの中で遊ぶのがつまらなくなった大人は、
「ズル」の中で遊ぶことを覚えるようになる。
ルールから外れた「ズル」の中にしか、楽しみを見いだせない「ズルい大人」、
可哀想な大人。
まだ、ルールの中で楽しめる良い子は、決して、真似をしないように。