伝言ゲーム

お墓の見える仕事場で仕事をしている。
裏山の中腹にある墓地には、
毎日、誰かしらが花を供えにやってくるが、
墓地へ入る山道には「〇〇墓地」と、看板が出ている。
その看板の隣には、「乃木三蔵墓地」という案内も出ている。
乃木三蔵とは、日露戦争の際の陸軍大将・乃木希典の叔父のことで、
そこまで有名な人ではないが、
乃木大将(希典)が一度、叔父さんの墓参りに来たということで、
ささやかながら名所になっていると聞いた。
墓参りに一度来ただけで、後々語り継がれるほどのエピソードになるなんて、
当時の乃木大将の影響力の強さを感じる。

本当に乃木大将がやって来たかどうかは知るよしもないが、
後世に残るエピソードというのはたいてい真実じゃないことが多いし、
別に、真実じゃなくてもいい。
ニュートンがりんごの木を見て、万有引力の法則を見つけたというのも、
嘘と言えば嘘だし、
ガリレオが「それでも地球が回っている」と言ったのも嘘だと言われている。
エジソンの「天才とは1%の才能と99%の努力だ」ってのも嘘らしいし、
ワシントンの桜の木の話も嘘だと言われている。

伝言ゲームは、5,6人でやっても正確には伝えられないというのに、
100年、200年スパンの伝言ゲームが、正確に真実を伝えられるはずがない。
文書に残っているならともかく、
誰かが「言った」ことなんて、正確であるはずがない。
坂本龍馬の「日本の夜明けぜよ!」も、例に漏れず、
本人が言った言葉ではないらしいが、
「日本を今一度洗濯致し申し候」は、本人が手紙に書いた言葉なので、
裏が取れている。
「世の人は我を何とも言わば言え我が成す事は我のみぞ知る」
これも、手紙の中の言葉なので、龍馬の言葉だ。
龍馬はよく姉に手紙を書いていたので、確かな名言も多く残っている。
死んだ後にいろいろと誤解されたくない人は、
手紙でもメールでもLINEでも、ちゃんと書いておくに限る。
後世の人が語り継いでくれないような名言でなくても、
遺言でも相続でも借用書でも、ちゃんと書いておくに限る。