11/29 メタボリック

「体は口ほどにものをいう」
銭湯に行くと、色々な体の人がいて、
服の上からでは想像できなかった、その人の「表情」が読み取れる。
裸の付き合いというが、本当に裸になって普段隠している体を晒すことは、
普段晒している顔以外の部位から、たくさんの情報を与え合えるということだ。
頼りになりそうな裸の人も、信用できなそうな裸の人もいるし、
顔に似合う裸をしている人も、顔に似つかわしくない裸をしている人もいる。
たいていの中年の人は腹が出ているが、腹の出かたも色々だ。
今は、腹周りをウェストといって数値に置き換え、
ある一定数値以上の人に「メタボリック」というラベルを貼るけれど、
「出ている腹」にも色々あって、
どてっぱらも、ビールっ腹も、太鼓っ腹もいるし、
腹に脂肪を詰め込んだだけの「メタボリック」という呼び名にふさわしい腹もある。

アメリカの考えなのか知らないが、腹が出ているのはだめな事だ、なんて考えはよしてほしい。
中年になっても、ジムに通って、ウェストを引き締めるなんていう発想はいらないし、
優良企業のCEOになるためには、メタボであっても喫煙家であってもいけないなんて考えは、
病的だと思う。
六つに割れた中年の腹筋などには、なんの価値もない。
中年の腹は出ていていいのだ。
そして、「出ている腹」にも色々ある。
いいものばっかり食べすぎた結果、内臓周りに脂肪が付きすぎて、
自分の金的が隠れてしまうほど大きくなった腹は、まったく美しくないが、
白髪が生えてくるように、歳を重ねることで、自然に前に出てくる腹は、
まっとうなエイジング(加齢)だ。
博多・山笠(祭)などの祭りで、ふんどしの上にしっかりのっている腹は、信頼の証だ。
中年の体の厚さや大きな腹は、この世で長年生きてきた男たちのリアリズムだ。
それを「メタボ」と呼んで蔑んでしまえば、世の中スリムな男だけになってしまう。
この世には、七福神の布袋さんや恵比寿さんのような、どっぷりとした腹が時に必要とされる。
大阪のビリケンさんや東北の仙台四郎のような、福を運んでくる男たちは、
いつだって立派な腹を持っている。
福が貯まっている立派な腹と、脂肪しか溜まっていないだらしない腹を
同じ呼び名で呼んではいけない。
ましてやこの国では、「肚が据わる」「肚が決まる」と胆力が宿る場所でもあった腹を、
「ウェスト」などと呼んで、数値だけで判断しては、中年の男の良さが消えてしまう。
若者には若者特有の肉体があるように、中年には中年特有の肉体がある。
「出ている腹」には、中年にしか出せない味がある。