12/26 羽生善治

高い声の男の代表は、将棋の羽生さんだと思う。
羽生さんの声は、高い。
僕は、羽生さんの声の高さに、救われる時がある。
もしも、あんな頭脳明晰な人の声が低かったらと考えると、
なんだか恐ろしい。
低い声は、人間社会を向いている。
重厚な声は、人を脅したり、命令したりすることができる。
高い声に、そんな威力はない。
高い声では、人を動かしたり、意のままに操ることができない。
羽生さんの声では、隊列もきれいに動かない。
高い声は、そういうことには向いていない。

羽生さんの声は、羽生さんの知性同様、からっとしている。
宇宙に開かれているような、
からっとした知性と、
重みも渋みもない、からっとした声。
ああいう、理詰めの、理工系的な天才の声は、総じて高い気がする。

理工系の頭脳明晰な人は、しゃべりも、下手な印象がある。
(羽生さんは、話すのが遅いけど、下手ではない)
それは、多分、口が、思考に追いついていないからだ。
思っていることを口に出そうとしても、頭に口が追いつかないから、
思っていることすべてを言えずに、断片的になる。
聞いているほうは、話の間が飛ぶので、なんだかよくわからない。

理工系の頭脳明晰な人は、字も下手な印象がある。
多分、字をきれいに書くことに興味がないのだろう。
そして、これも、手が、思考に追いついていないことが原因だ。
思っていることを書こうとしても、手が頭に追いつかないから、
思っている通りに書き上げる前に、次の文字に行ってしまう。
頭のスピードに手のスピードが追いつかないのだ。

なんだか理工系の人を悪く言ってしまったが、
羽生さんは理工系の代表でもなんでもない。
羽生さんの知性のイメージが理工系っぽいってだけで、
羽生さんは、理工系ではない。
羽生さんは、
知性が「文」とか「理」とかに別れる前に、
将棋界に入り、爆速でのし上がっていったのだ。
羽生さんは、高卒だ。
しかも、通信だ。
羽生さんの知性は、
文系や理系を、とっくに凌駕してるのだ。
アメリカでは、
ジョブズやザッカーバーグが大学を中退したことが、
今やかっこよく語られているが、
”うちの”羽生は、通信制の高卒だ。
大学なんて、鼻っから、価値を見出していないのだ。
かっこいいんだ。
声も含めて、かっこいいんだ。