2/19 うるさい声

普段から、言葉にひっかかることがある。
独り言でも、適当な言葉を使うと、
自分に言葉尻を掴まえられる。
「まあ、あいつハンサムだからな」
「ハンサム?ハンサムっていうか、さわやかじゃない?」
「んー、さわやかってより、目鼻立ちがはっきりしてるってことでしょ?」
「ピンポイントに、鼻筋が通ってるって言ったほうがよくない?」
「だからそれが、器量好しってことでしょ」
「やっぱりハンサムってことなんじゃんよ」
「いや、ハンサムってのはさ、整ってるってことでさ、それが与える印象を含んでないんだよ」
頭の中が、常にうるさい。

普段はそれでもかまわないが、
感情的になった時もこういうのが顔を出す。
「なんでちゃんと彼女を、支えてあげられなかったんだろう・・・」
うぅ、うぅ。
彼女に対する悲しさと後悔が胸に広がり、
涙が止まらない。
嗚咽が漏れ、全身が熱くなってくる。
「ぼ、ぼくは・・彼女に何もしてあげられなかった!!」
後悔の言葉が、からだの外に溢れ出る。
僕は彼女に何もしてあげられなかったのだ。
「いや、何もっていっても、何もじゃなくね?」
「あの時はかけつけたし、あの時もちゃんと相談のったし」
「あの時だって手伝ったし、あの時は二時間も待ったし」
「何もってわけじゃないよね」
「いや、何もってのは、本当に何もってわけじゃなくてさ、何もしていないのと同じくらいっていう意味でさ」
「だったら、何もって言わずに、ほとんど何もとかさ、違う言い方がいいんじゃない?」
「いや、でもそれはほぼ同義っていうかさ、泣いてんだからさ、勘弁してよ」
「でもさ、何もっていうのは、正確じゃないよね」

こんな声が聞こえると涙も乾く。
絶望くらい、簡単にさせてくれ、と思う。