2/26 機械との競争

『機械との競争』という本がある。
IT技術の発達スピードに人間がついていけず、
雇用をどんどん機械に奪われていることを主張した良い本だ。
機械は単純な労働力としてではなく、
知的分野においても人間より高い能力を示すため、
ホワイトカラーの管理職が不必要になるなど、
様々な分野で今後も、人間は機械と競争をしていかなければ
ならないということを鮮明に描いている。

その本を読んでいたのは夏で、ゴキブリがよく家に来ていた。
ゴキブリは素早い。
「ゴキブリを1匹見たら、100匹はいると思え」という
言葉があるくらいだから、素早く駆除しなければならない。
(あれ、それはねずみだっけか)
ゴキブリを叩くのに『機械との競争』はちょうどよかった。
適度に厚いし、重いし、持ちやすい。
すぐさま手に取り、ゴキブリをはたく。
表紙に茶色いシミが付く。
なかなか凝った装丁だったのに、残念だ。申し訳ない。

するとまた別の日、別のごきぶりが登場する。
ゴキブリは素早い。
何で叩こうかとか、殺して液体が出るのは嫌だなとか、
躊躇してる間に本棚の隙間に逃げ込んでしまう。
考える暇なく、手元にある表紙の汚れた『機械との競争』で
一気に叩き潰す。
危うく、テレビの裏に逃げられるところだった。
表紙にまたひとつ、嫌なシミが増える。

そんな具合で、ゴキブリが出るたびに
『機械との競争』が役に立った。
(あの部屋は何であんなにゴキブリがいたのだろう)
つまらない本を揶揄する言い方で、
「いい鍋敷きでした」って言い方があるけど、
『機械との競争』は、いいゴキブリ叩きだった。
本の内容ももちろんよかった。
今は、表紙を捨てた状態で、本棚の奥の方に置いてあるが、
たまにタイトルが目に入るたびに、
あの夏の「ゴキブリとの競争」を思い出す。