4/14 ワイプのなかのポーズ

テレビの情報番組やバラエティ番組で映像が流れている際、
出演者の顔を映す小さな窓をワイプという。

他の映像が流れている間、
スタジオでそれを見ている芸能人はワイプの中で、
うんうん頷いたり、「ほぉ」と口ぱくで言ってみたりする。
どれも大したことない映像なので、
そんなに驚くこともないだろうに、
大げさに驚いてみせるのは、出演者としての「ポーズ」だ。
それは、テレビショッピングみたいなものだが、
ポーズというのは、なかなか加減が難しい。
食レポの映像中、ワイプの中であからさまに
「おいしそぉ」と口パクしてもわざとらしいし、
無表情で見ていても、テレビとしてはダメなのだろう。
その辺の加減が難しいからこそ、
「ワイプ芸」という言葉もあるのだろうと思う。

テレビに映っていなくても、僕は日々の暮らしの中で
ポーズすることがある。
自分より年上の人の話を聞いている時に、
覚えておいた方が良いなというワードや名前が出てきたら
メモ帳にメモを取る場面がある。
本当は、そのくらいのこと記憶できるのだが、
ポーズとして、メモ帳を取り出す。
「ちょっと待って下さい、いまメモしますから」
と言いたげな感じで、バッグからメモとペンを取り出す。
「私は今、あなたの話を真剣に聞いてますよ」
というポーズだ。
なぜわざわざ、こんなポーズをするかというと、
相手の話がつまらないからだ。
僕のつまらなそうな顔と取り出したメモ帳で、
つまらなそうな感じを相殺しているのだ。
本当に話が面白ければ、メモなんぞ取らない。
聞くことに夢中だ。

最近では、スマートフォンにメモすることもできるが、
これはポーズになりにくい。
スマートフォンでメモをとるのと、
スマートフォンでパズルゲームするのは、
大して見かけに差がでないので、ポーズになりにくい。
つまらなそうな顔をしているだけに、
こっそりパズルゲームしている可能性もある。
やはりそこは、片手サイズのメモを左手に、
右手にペンを持って、
「あなたのお話、一字一句もらさず記憶します」
という姿勢が一番伝わるだろう。

ただ、あくまでこれは、ポーズである。
本気ではない。
もしワイプの中で、食レポの映像を本気のまなざしで
見ている芸能人がいたら、その人はどうかしてるし、
プロデューサーも使いにくいだろう。
プロデューサーが求めているのは、
自然体でポーズができる人だ。

そんなことを、就職活動生が集まる会場を覗いた時に
ふと、思った。
彼らは会社役員を前に、真面目に、メモを取っている。
壇上の会社役員がしている話は、
覚えておくべき注意事項ではなく、
ただの社会人としての心構えとスローガンだ。
メモするようなことは、何もない。
「それって、ポーズだよね?」
心の中で、メモしてる就活生に質問してみる。
メモに夢中で、答えは返ってこない。
会社側が求めてるのは、
懸命にメモとるやつじゃなくて、
自然にメモとるポーズができるやつだって
壇上で最初に言ったほうがいいんじゃないでしょうかね。