6/9 重いものから軽いものへと

友だちがインターネットで買ったコンタクトレンズは、
シンガポールの工場から送られてきた。
ネット社会に触れて、ふと豆腐屋の倅を思い出した。
豆腐を毎日売ってる彼が、ネットでコンタクトを買って、
シンガポールから届いたら、どう思っただろう。

「母さん、見てよ、ほら、コンタクト。
ネットでコンタクト頼んだらさ、シンガポールから来たよ。
なんでかわかる?軽いから。軽いから!郵送費かかんないから
世界のどこで作っても送れるんだね。すごいね。
豆腐とは違うね。キロ当たりの単価が桁違いだもんね。
えらい違いだよ。いいよね。水道費もかかんないしね。
昨日ググったら、武雄市の水道代、全国でも最悪レベルだってね。
そんなとこで毎日何百リットルの水使って、豆腐作って、
88円で売ってる俺らってなんなんだろうね。何で父さんは、
わざわざ水道代の高いとこで商売始めたんだろうね。
ねえ、母さん?何でか知ってる?ってか、聞いてる?」

豆腐は重い。重いのに安い。
コンタクトレンズは軽い。情報や金融やデザインも軽い。
軽いのに高い。
時代は軽さを求めているらしい。
豆腐を作ってる側からすると理不尽だが、
軽いものこそ高値で取引きされている。
なんて時代だ。
音楽も映画も重い題材は受け付けない。
フィクションの中で人間の本性や本質に向き合うほど、
みんな暇じゃない。みんな、
忙しいのだ。

忙しい現代、ウェブの記事も3分で読める分量と言われた。

このコラム、数えたら、ここまで、522文字。
よし。2分で読める分量だ。

そういえば、東京オリンピックに水素ステーションが
設置されるらしい。なるほど。
ガソリンから水素へ。
時代は重いものから軽いものへとシフトしている。
言葉も軽いもの、男も軽い男がいいのかしらね。