8/10 真夏だから真冬の話

毎日暑いので、寒かった頃の話を。
冬の京都にいた頃、仕事の休みに近くの本屋さんに行くと、
「改装のため店休」の張り紙がドアに。
さて、じゃあ今日は何しようと考えながら歩いていると、
京都駅に着いてしまったので、
とりあえず京都を離れてみるかと、
どこに行くかも考えず、ホームに入ってきた鈍行列車に乗りこみ、
どこか適当なところで降りればいいかと、
本を読み、車窓を眺めていたら、
福井駅に着いてしまった。

特に福井に用はなかったけれど、
他の街に行く用もなかったので、
そのまま福井駅で降りると、2月の福井は、雪国だった。
京都の、近所の本屋に行くつもりで外に出た僕の足元は、
見るからに寒そうなくるぶしソックスと
すでに雪が染みてきている布地のスニーカーで、
あきらかに、場違いだった。

駅を出た、道路越しのバス停には女子高生が4人バスを待っていて、
全員、制服なのに、長靴を履いていた。
隣にいたおっちゃんに、
「高校生が、長靴履くの、普通っすか?」
と聞くと
「普通やろ」とつぶやいて、おっちゃんは、雪をかいていた。

駅前のバス停には、緑色のスコップが設置してあって、
「ひとかき運動」という標語が、掛けてあった。
「バス待つ間に、このスコップでひと雪かいといて」
ということらしい。
待ってる人の時間をもらってでも、雪をかいてほしいくらい、
福井の雪は、次から次から、地上に降りてきていた。
「さっきまでいた京都とはえらい違いだな」
そうつぶやく吐息も真っ白だった。

日本は、ちょっと移動すると、全然違う表情を見せる。
もしかしたら、今暑いのは、ここ東京だけかもしれない。
ちょっと行くと、雪が舞い散っている街もあるのかもしれない。
そんなことを書いてると、なんだか涼しい気分になってきた。
納涼。
雪の話を書いて、勝手に涼しくなる。
元手のかからない、言葉の打ち水、言葉の風鈴だ。