IQ

 

中学生の頃、野球チームのエースだった男は、
どうしようもなく野球IQの低い男だった。
学校の勉強はできる方から数えた方が早かった彼だったが、
マウンドにあがった瞬間、頭の悪い男になった。
なんでその場面で無理してアウトを取りにいくのか。
ここで四球出すことがどういうことかわかってんのか。
状況判断、敵の分析、試合展開を読む力、
どれをとっても低く、勝つためになにをすればいいのかをわかっていなかった。
もしくは、わかっていても、それを考えながらプレーすることができなかった。
野球IQと、机の上のIQが違うことを、毎試合、痛感した。
良い奴だったけど。

野球と勉強で必要とされている頭の良さが違うのは、
誰にだってわかるかもしれないけれど、
ほとんどの人が同じ勉強をした後にそれぞれが就く仕事だって、
必要とされるIQは、分野ごとに大きく違ってくる。
商売IQと、官僚IQと、デザイナーIQと、看護師IQは全然違う。
根底としての、読解能力やコミュニケーション能力、持続力、忍耐力など、
共通する部分はもちろんあるけれど、
一年に一回しか米作りができない農家と、
A/Bテストで試作品走らせながら改良を繰り返すウェブデザイナーとでは、
必要とされる能力は自ずと違ってくる。

いま、大学の医学部に入学する学生のうち、
一割以上が「地域枠」を利用して入学してくる。
大学卒業後、地域医療への従事を前提として入学してくる彼らには、
入学時、志望書や推薦書、小論文の他、40分間の面接が課せられる。
4人の教授を相手にした20分×2の面接。
40分間、色々な角度から質問されると、
たいがいの18歳は、なにを考えて生きているのか、すっかり見透かされてしまう。
「医者IQ」は、ペーパーテストだけで測ってはいけない。
そう、現場の人間が感じていると、自ずと、こういう形の入試が増えてくる。

先日、サッカー日本代表がW杯出場を決めたが、
その後に行われた最終戦のサウジアラビア戦では、
攻め手に欠け、0-1で負けてしまった。
日本代表は、オシム・ジャパン以降、
「日本人らしいサッカー」を追求しているが、
ポゼッションサッカーなのか、カウンターサッカーなのか、
いまだに、自分たちの形がなんなのか、模索が続いている。
ただ、例え、自分たちの形といえるものが見つかったとしても、
今のサッカー界は、一つの戦術だけで勝てる時代ではなくなっている。
相手に応じて戦術を臨機応変に変えていく柔軟さこそが必要とされており、
それこそが、日本サッカーに、もっとも足りないものだと指摘する人もいる。
足りないのは、相手や状況に応じてやるべきことを考える「サッカーIQ」。
そうであるならば、現場で「サッカーIQ」の必要性を感じている人間が、
入試制度(選抜方法)を変えてみるしかないのかもしれない。