変なやつと変なやつ

日本は表記として漢字を採用しているために、中国語と適正な距離が取れていないことが多々ある。
例えば、「習近平」は日本語では「しゅうきんぺい」だが、中国語読みでは「シージンピン」である。
しかも、中国語は発音が複雑なので、単に「シージンピン」と言っても中国人に通じるわけではない。
さらに、「習近平」は、英語表記では「Xi Jinping」であるが、普段、「しゅうきんぺい」の音に慣れすぎている我々は、英語における習近平を「Xi Jinping」として、再度、覚え直さねばならない。
これが、「ドナルド・トランプ」なら、「Donald Trump」という綴りを目にした瞬間、「ドナルド・トランプ」のことだなと想像することができる。

そういう面倒くさい距離もあってか、中国人に会うと、「本名ではなく」「日本名」を使っているケースがある。
日本には「イングリッシュネーム」のような、本名とは別の、その国独自の名前を自分につける習慣などないはずなのに、彼らは日本名を持っており、その名で呼ぶことを推奨してくる。

先日、ある中国人の友人とメールしていた際、彼のメールアドレスの名前が「岡崎周平」という日本名になっていたので、「あぁ、そういうことか」と思い、なぜ日本名を「岡崎周平」にしたのか聞いたところ、「あぁ、これは、日本名じゃないんですね。これは、かつて会ったことのある知人の名前ですよ」と言う。

「ん?かつて会ったことのある知人の名前?」
その、よくわからない返答に、詳しく聞いてみると、彼は、かつて、日本にやってきた際、とあるイベントで日本人と知り合いになり、その日本人と別る際に、その人が使っていたメールアドレスとパスワードをプレゼントにともらったのだという。
その男、名を「岡崎周平」という。
そして、それ以来、その中国人は、「岡崎周平」のメールアドレスを使っているのだという。

「ん?」

その奇妙なエピソードに、なんだかよくわからない感情が湧いてきた。
日本人が、自分が使っているメールアドレスを他人に送るなど聞いたことない習慣だし、他人のアドレスを素直に受け取って常用しているのも、それはそれで、たいがいな事である。
変なやつと変なやつが出てくるエピソードなので、どういうトークテーマの時に話せばいいのかわからない話なのだが、その中国人は、今も、数回しか会ったことのない男の名前で、多くの人とメールのやりとりをしている。
二代目・岡崎周平として。

もし、今後、二代目・岡崎周平が何かの犯罪で捕まって、「岡崎周平という偽名で犯罪を繰り返していた」という言葉をニュース番組で目にしたら、この、なんだかよくわからない感情は一気に氷解するだろうが、それまでは、変なやつと変なやつが出てくるよくわからない話のままであり、ずっともやもやした感情にさせる話のままである。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次