3/8 旅行代理店



時間の余っていた20代の頃、遊びにいくお金もないので、
金のかからない遊びを色々考えていて、そのうちのひとつに
旅行代理店に遊びに行くというのがあった。
お金がないのだから当然、旅行になんか行けないのだけど、
旅行に行くつもりになって、旅行代理店に行く。

友達と二人でパンフレットを物色していると、
スタッフのお姉さんが話しかけてくれる。
「お二人でご旅行ですかぁ?」
そう、そういう設定です。
「行き先は、どこかお決まりなんですか?」
「いや、まだ、どこにしようか迷ってて・・・」
「ヨーロッパなんかいいって、俺は言ってるんですけどねぇ」
友達もシチュエーションプレイに慣れている
「ヨーロッパ方面のパンフレットは、
あちらの棚にもご用意しておりますので」
「まあ、でも、そんな長く休みが取れるわけじゃないからね」
「(毎日、休みみたいなもんだけどな)」
「そうですよね、お仕事もお忙しいでしょうしね」
「お前、インドなんか、どう?一度は行ってみたいもんだよ」
「インドか、そうだな・・・」
「インドでしたら、個人旅行で行かれる若い方向けの
お安いパックも色々とありますよ」
「なんかインドって気分じゃないな」
「パキスタンは?」
「アジアがよろしいですか?」
「近いのがいいよね」
「サクッといけるのがいい」
「では、台湾なんかいかがですか?」
「あ、台湾ね。いいじゃない」
「台湾かぁ。俺、1回行ったからなぁ」
「行かれたのは、台北ですか?」
「そうです。台北。マンゴーのかき氷食べたんっすよ」
「台北1回行っただけで、台湾はもう分かった
みたいな顔すんのね・・・」
「そういうわけじゃないけど・・・」
「2度目の台湾でしたら、高雄なんていかがですか?」
「いいですねえ」
「高雄?聞いたことない」
「台湾の第二の都市ですよ。歴史的建物なんかもあって、
結構、見るところありますよ」
「高雄、いいかもなあ」
「いや、ちょっとまてよ。俺は、初台湾なんだよ。
最初は、台北だろ」
「別に初日本が東京じゃなく京都の人もいるからいいやん」
「それはちょっと違うだろ。京都と高雄は違うだろ」
「どう違うんだよ。行ったことないくせに」
「お前だって、高雄は行ったことないだろ。
台北と高雄の違い、わかんねえくせに」
「お前が高雄と京都が違うって言ったんじゃねえか。
台北と高雄が違うとは言ってないよ」
「すいません。
高雄はですね、台湾の南部にある街でして・・・」

行くつもりがなくても、旅行の話をするのは楽しい。
未来に楽しみなことがあるってのは、いいもんだ。
ただ、ほどほどにしておかないと、
本気で旅行に行きたくなってくる。
金を使わないための遊びだったのが、
金をたくさん使う方の遊びになってしまう。
特に、男女でこの遊びをやると、最後は必ず、
たくさん金を使う方の遊びに変わる終わるので、ご注意ください
 

 

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