君は、カポエイラを知っているか。
現在行われているオリンピックの地・ブラジル発祥で
華麗な足技が目を引く格闘技だ。
手技も寝技もなく、蹴りだけで戦うため、
異種格闘技戦などにたまに登場しても、
たいてい早々に敗退していくことから、
「世界最弱の格闘技」と不名誉なレッテルを貼られている。
しかし、
リングの上では劣っているように見えるカポエイラは、
そもそも単純な「格闘技」ではない。
アフリカから連れてこられた黒人が、為政者の目を盗んで、
ダンスにカモフラージュさせて発達させた格闘技と言われるように、
ダンスのようでもあり、護身術のようでもある。
「練習」では、みんなで輪を作り、民族楽器の奏でに乗せて、
お互いの技を繰り出していく。
組手を見守る人達は、楽器に合わせ、輪の中の人に向かって、
歌い、声をかけ、クラップして盛り上げる。
格闘技というより、民俗芸能のようにみえる。
さらにここ数十年で、
足技の動きがブレイクダンスに取り入れられたり、
教育やエクササイズとして子どもや女性にも浸透していく中で、
ダンスやスポーツ的な要素も加わるようになった。
格闘技として「世界最弱」と揶揄されたカポエイラは、
2014年、ユネスコ人類無形文化遺産に登録された。
格闘技としての技や術に対してでなく、
ホーダ(Roda)と呼ばれる皆が輪になる形式に対してだ。
「集会」や「円」の意味を持つホーダで、
人は歌い、奏で、手を叩き、足を合わせて、連帯した。
格闘技ファンはカポエイラを「弱すぎる」と言ったが、
ユネスコは「価値がある」と言った。
ものの価値は、測る人によって変わる。
「世界最弱」は一つのものさしでしかない。
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