お店はお客を選ぶ。
カフェでもレストランでも雑貨屋さんでも、
来て欲しいお客さんのイメージというものがあって、
「こういう人たちでお店が溢れていたら素敵だなあ」と思える、
理想の”お客さん像”がある。
だから、理想に近いお客さんはついつい優遇しちゃうし、
理想に遠いお客さんは、ついつい邪険に扱ってしまう。
お客様は皆平等だと思っていても本心が覗いてしまい、
扱いに差をつけてしまうことがしばしばある。
そして、僕は、ほとんど、お店の理想のお客様になれたことがない。
友達と居酒屋に行くと、席が他にも空いているにもかかわらず、
大人数の大学生がコンパしている隣に座らされる。
いい席は、これから来るであろう素敵なお客用にとっておきたいのだ。
男友達と二人で訪れたバルでは、
どうみても男女カップルが座るような、
狭くて天井も低い、くっついて座るタイプのシートに案内される。
僕ら二人の関係に、気を使ってもらったわけではないだろう。
もしそうだとしたら、間違った気の使い方だ。
昨日訪れたタイ料理屋さんでは、
ランチが始まってまだ30分しか経っていないのに、
食べたいランチメニューにことごとく「SOLD OUT」シールが貼られていた。
まだ、30分しか経ってないのに!?
たぶん、店の看板メニューを、今後、頻繁に来なさそうな僕らに出したくないのだ。
その後行ったおしゃれカフェでは、
おいしそうなケーキセットに限って、何故か「SOLD OUT」。
「ドリンクのみにしろ。長居は、するなよ」
そういう、店側からのサインかもしれないと勘ぐってしまう。
どの店に行っても、僕が理想の客として扱ってもらえないのは、
服がださいからでも、靴が汚いからでもない。
たぶん、インスタグラムをしてなさそうだから、だ。
「この客をいい席につけても、人に知らせてくれなさそう」
そう思われているのだ。
時代は、拡散力。
おいしいと思って、「おいしい」と一人つぶやくだけではだめなのだ。
おいしいと思ったら、写真を撮って、SNSにアップして、多くの人に知らせてこそ、
お店のためになる。
そんなお客を、お店は優遇するのだ。
無口な客、内省的な客、友達の少なそうな客は、すべてお店の敵。
いい席に案内されたいなら、お店に入った瞬間、
フォトジェニックな場所をスマホで撮るくらいのポーズが必要だ。
お店も商売。
お客を選ぶ権利はあるし、お客を選びたい気持ちはわかる。
自分がそちら側にいただけに、その気持ちは痛いようにわかる。
しかも、僕に拡散力がないことも当たっているだけに、反論の余地はない。
お店の方、僕を優遇しないのは、結構妥当な判断ですよ。
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