サブスク

NetflixやAmazon Primeなど、サブスクと言われる定額制映画サービスができてから、レンタルビデオ屋に行かなくなった。
レンタルビデオ屋に行かなくなったということは、映画館なんて更に行かなくなったということで、ここ数年を思い返してみても、片手で足りる数しか映画館には出向いていない。

映画館に行かなくてもレンタルビデオ店に行かなくても、家で何本もの映画をクリックひとつで見れるということは便利なようでいて、なにか大事なものを失わせているという話は、「ファスト消費」という言葉が語るところだけれど、今、思えば、TSUTAYAで、ビデオやDVDのパッケージとにらめっこしながら、「これを借りていいものか」、「この映画でほんとに今夜の心は癒やされるのか」、と格闘していた時間は、何かしら大事なものを保持しつづけてくれていたのかしらと思うと、近所のTSUTAYAやGEOの意味を今更ながら、思う。

自宅にいながら何本もビデオが見れるというのは、どの作品にお金を払うか悩まなくてよいということで、それは、作品一本に対する覚悟を持たなくてよいということだが、作品を数分だけ見て止めたり、早送りして見て止めたりと、気に入らないならすぐにチェンジでき、次を簡単にお試しできるような便利な環境は、本当に、自分の人生に、傑作として残るような作品に巡り合える機会を減らしている。

かけた覚悟と熱量の少ないところに、大したリターンはなく、それは映画に限った話ではなく、仕事でも結婚相手でも同じことで、選択肢が多く、選ぶリスクが少ないということは、その人が身を賭してないわけで、その姿勢が大きな果実につながることはない、と個人的には思っているが、世の中にはマッチングアプリから結婚するカップルが何万組といるわけで、多くの選択肢から年収や趣味や外見といった「条件」から相手を選び、出会った人たちがそのまま結婚生活を何年も続けているという現状が僕にはまったくもって不明で、不思議でならないし、その圧倒的な婚約件数という事実が、僕の「気に入らないならすぐにチェンジでき、次を簡単にお試しできるような便利な環境は、本当に、自分の人生に、傑作として残るような作品に巡り合える機会を減らしている」という考えの不正確さを物語っているような気もしているので、もしかしたら、サブスクの中で傑作と呼べる作品に出会う人も、何千人、何万人といるのかもしれない。

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