GRIT

  

2017ビジネス書大賞の読者賞に、
「やりぬく力 GRITグリット」が選ばれた。
(ちなみに、大賞は、「サピエンス全史(上・下)」)

「やり抜く力」と日本語に訳されたこの本は、
ベンチャー企業での入念な聞き取りによって、
成功に必要なものが、アイデアや資金力ではなく、
「途中でへこたれない力」=グリットだと主張する。
それまで、アイデアの質や資金調達、成長速度が重要だとみなされていたIT界隈に出てきた、
角度の違う指摘に、日本のビジネスマンもピンときたのか、
30万部という売上につながった。

ローリング・ストーンズにしても、日本のお笑い芸人にしても、
輝ける時代を過ぎてもなお、やり続けることがかっこいいと言われる時代、
一瞬の最大風速を目指すのではなく、
やり続けることが大切なのだという指摘はもっともで、
あまりにももっとも過ぎたために、僕は、まだ本を読んでいない。
グリットとは、つまり、根性のことだ。
あきらめない力、情熱。
つまりは、努力・忍耐・根性、みたいなことだ。
そんな日本人が好きそうな古びた価値観を、横文字で言ってくれたのだから、
日本のビジネスマンが読みたくなる気持ちもわかる。
解剖学者の養老先生は、ことあるごとに、
大事なのは「努力・忍耐・根性」と言っていたが、
「今はそんな言葉、流行らないけどね」と付け加えていた。
そして、「だとしても、それしかねえ」とも言っていた。

言葉は時代によっていろんな形をとるが、
大切なことはほとんど変わらない。
同じことが、違う表現で、何度も繰り返されるだけだ。
「根性」と言っても見向きもされない時代には、
「グリット」と言って、振り向かせるしかない。
だとすれば、今、古臭くなってしまった
「スパルタ教育」「詰め込み教育」「徒弟制度」などにも
大切な価値観が埋め込まれているのだろう。
それを埋もれたままにさせないためには、
縦の言葉を横にしていくしかない。
「反復」「繰り返し」「兄弟子」「師匠」「かわいがり」
「うさぎとび」「水飲むな」「タバコ買ってこい」
「罰として全員坊主」「負けたから学校まで走って帰れ」
こういった言葉を全部横文字にできれば、
いろんな価値観が現代に復活するのだと思う。
まあ、スパルタも反復(ドリル)も最初から横文字だから、
世界中に似たような言葉は存在するんだろうしね。
それが必要かどうかは別にして。